ITコンサル会社に転職する際に読んだ内田和成さんの「論点思考」に記載されているエッセンスや格言を紹介します。
「論点思考」 著:内田和成
第1章:あなたは正しい問いを解いているか
・「経営における最も重大な過ちは、間違った答えを出すことではなく、間違った問いに答えることだ」(P・ドラッカー)
・まず与えられた問題を疑うことが重要。
(例)ある会社が「グローバルの勝ち組企業の中でよい提携先はどこか」と聞いてきた。
本質は「どの会社と組むと自社が勝ち組になれるか」という部分にある。
第2章:論点候補を拾い出す
・論点設定せずに問題解決に取り組んではいけない
(例)オリンピックで日本が獲得する金メダル数を増やすにはどうしたらいいか、という問題は論点とは言えない。なんのために金メダルを増やすのか、国威高揚が目的ならノーベル賞でもよいし、健康増進ならもっと別の施策が考えられる。
・論点は以下によって動く
- 論点は人によって異なる
- 環境と共に変化する
- 論点は進化する
・自分が作業したり、議論することで、当初は論点だと思っていたことが実は論点ではなかったり、あるいは同じ論点でもさらに深掘りする余地があることに気づき、論点が進化することもある。
第3章:当たり・筋の良し悪しで絞り込む
・仕事の依頼者の関心の低い分野を探る
→ 経営者が関心を持っている分野は企業の中でも比較的しっかりマネジメントされているのに対し、関心を持っていない分野は大問題が潜んでいたり、改善の宝の山があったりすることが多い。
・筋の良し悪しを見極める上で大切なのが、「解決できるか」にこだわるである。
- 解決できるか、できないか
- 解決できるとして実行可能(容易)か
- 解決したらどれだけの効果があるか
・解ける確率の低い論点は捨てる
・苦労して実行しても効果の上がらないケースがあり、それでは意味がない。よくあるのが自分では正しく解いたつもりだが、実行したところで全社的なインパクトはほとんどなく、本人の自己満足で終わっているケースである。(コンプライアンスに関して、委員会を立ち上げ、マニュアル整備して遵守されているか監視システムを作るなどが当てはまる・・・)
・筋の良い論点とは、かなりの確率で答えが出そうな論点であることが必要条件。そして、その解決策を実行したら、企業として成果が上がりそうなもの、ここまで満たしていれば十分条件。
・あれもこれもでは結局何もできない。経験を積みダメな論点を消すことが大事。
第4章:全体像を確定し、論点を確定する
・コンサルの世界では「プロービング」という言葉がある。針で探りを入れるというのが本来の意味だが、こちらから刺激を与えることで相手の反応を引き出し、本質を探る手法を指す。
・論点の仮説を立てる3つのアプローチは以下の通り。
- 質問して相手の意見を聞く
- 仮説をぶつけて反応を見る
- 現場を見る
・多くのビジネスパーソンは与えられた論点に質問などせず、すぐに着手する。日本では、上司に「なぜこれをやるのか」「目的は何か」を聞くことは無礼なので質問しない。しかし、質問をして上司の論点を明確にしていく作業はとても重要である。
・クライアントが本当のニーズを隠し持っていることもある。例えば、経営者が向こう20年にわたって盤石な経営ができる組織づくりをしたいといったとき、要は息子に事業継承したいが手伝ってくれるかという意味だったりする。表立って優秀な人材を抜擢するのではなく、息子に任せたいということは言いたくない。だから、得手してこうした言い方をする。それを読み違えて、息子の能力不足を露呈するような解決策を提案しても満足してもらえない。
・部内を活性化という同じ目的をもつ二人の部長がいても、論点は異なる。純粋に会社をよくしようと活性化を望むケースと、出世して役員になりたいという同期から活性化して成績アップを図りたいケースなどが考えられる。同じ指示が出たとしても、裏側に込められた意味は全く違く、プランも異なってくる。
・仕事でも私生活と同じように、相手の発言の真意、意図、バックグラウンドを考える必要がある。そして直観を大切にした方がよい。
・著者が一番大事にしているのは、論点とアプローチがいかに相手をワクワクさせるかということ。「ワクワク、ドキドキ」が必要なのは、問題解決策を実行するのが人間だからである。
・頭の中に20の引き出しを用意し、さらにそれぞれ20のネタを用意しておくと良い。ビジネスパーソンは色々な経験を自分の引き出しに蓄積することが大切。
・イシューツリーをきちんと書き上げてから論点を設定することは少なく、虫食い状態でも良い。
第5章:ケースで論点思考の流れをつかむ
・現象の把握 → あたりをつけてインタビューする → 引き出しにある手法で整理する
第6章:論点思考力を高めるために
・視野・視座・視点の三要素で論点思考を高める。
- 視野:普段あまり見ていない方向に眼を向ける
- 視座:二つ上のポジションに就いているつもりで仕事をする
- 視点:切り口を変えてみる(鳥の目、虫の目)
・反論されても、説得せずに聞くことが重要。
・話を聞くコンサルはクライアントから評価される。「Aさんに話すと、スムーズに物事が進む」などと言われる。食い違った時こそチャンスであり、対立した際に守らず、全てをオープンにして話を聞くことで、論点がよりクリアになっていく。
・課題の与え方の例として、シャチの例がある。
- ①シャチは魚か(仮説に基づいた質問)
- ②シャチは魚か哺乳類か(白黒はっきりさせる論点)
- ③シャチは何類か(オープンな論点)
- ④シャチはどんな生物か(ただの質問)
→ ①は論点を絞り込みすぎ、④は範囲が広く収集がつかなくなるのでNG。
②、③のような論点が望ましい。